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東京高等裁判所 昭和52年(ラ)662号 決定

抗告人

協栄産業株式会社

代表取締役職務代行者

横田真一

右代理人

佐久間和

抗告人

協栄産業株式会社

代表取締役職務代行者

佐久間和

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

職権によつて按ずるに、記録によると、抗告人らが本件抗告において取消しを求める原決定は、前示仮処分申請事件につき原裁判所が昭和五一年四月六日になした右仮処分申請事件の本案判決確定にいたるまで債務者遠藤章につき協栄産業株式会社の取締役兼代表取締役の、債務者王健栄、同小出耀星、同邱文祥につき右会社の取締役の、各職務を執行してはならない旨及び右職務執行停止期間中抗告人横田真一を同会社の取締役兼代表取締役職務代行者に、抗告人佐久間和、訴外奥一夫(奥一夫はその後辞任を申し出たので昭和五二年四月一四日澤田和夫が改めて選任された。)を取締役職務代行者とする旨の仮処分決定についてその後仮処分債権者ら全員から同仮処分申請事件の取下げがあつたので右の仮処分決定を取り消したものであつて、抗告人らは右仮処分申請事件の当事者ではなく、同仮処分決定において前記会社の取締役兼代表取締役あるいは取締役の職務代行者に選任された者にすぎないことが明らかである。商法二七〇条一項に基づき取締役の職務の執行が停止され、これを代行する者を選任する仮処分がなされ、会社の取締役がその職務を停止されたときは、爾後右取締役はその職務を執行することができなくなり、代行者において従前の職務執行者に代わり職務執行の権限を取得するものであるが、右仮処分命令によりその職務の執行が停止されるのは、その性質上自ら当事者(会社を被申請人とするものにあつては会社の職務執行者として)となる当該仮処分(これに対する異議申立て、事情変更ないしは特別事情による取消しの申立て、控訴の提起等)及びその本案訴訟の追行を除く職務の執行に限られ右仮処分の当否を決する訴訟及びその本案訴訟の追行、したがつてまたその職務執行停止の効果及びこれが補充として仮になされた代行者選任の効果についての訴訟の追行は職務代行者が代行すべき職務に属さないから職務執行停止及び代行者選任の仮処分につきその仮処分債権者の申請取下げに基づく同仮処分を取り消した原決定に対し職務代行者において自らあるいは会社の取締役の職務の執行としても抗告をもつて不服を申し立てることはできない。右によると、本件抗告は、その当事者適格を有しない者によってなされた不適法なものであり、その欠缺は補正することはできないから、これが却下を免がれない。

よって、本件抗告を却下し、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のように決定する。

(菅野啓蔵 舘忠彦 高林克巳)

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